婦人科疾患と漢方治療(2)2019.03.29
前回のコラムでは、主に漢方医学(漢方薬)と西洋医学(西洋薬)の違いについてお話ししましたが、今回は婦人科疾患でよく処方される漢方薬についてお話ししたいと思います。
婦人科疾患で頻用される漢方処方
日本では、漢方薬は健康保険が適用されています。
現在、148種類の医療用漢方製剤が日常診療で広く使われています。
漢方治療には、まずは西洋医学的診断が必要です。
検査結果や数値などにしっかり表れるような病気であれば、西洋医学による治療が優先されますし、体質に由来する症状や検査に表れにくい不調であれば、漢方薬の出番となります。
さらに、漢方薬は、患者さんの症状だけでなく体質や体格などを診て、処方を決定します。特に、体質については、漢方独自の診断概念である「虚実(きょじつ)」「寒熱(かんねつ)」「気血水(きけつすい)」などを用います。
そのため、同じ更年期障害でも、Aさんは加味逍遙散(かみしょうようさん)、Bさんは当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)と、違う漢方薬が処方されることがあります。
漢方薬の処方には、西洋医学的診断と漢方医学的診断の両方が必要となりますので、医師による診断が必須です。
婦人科領域で、頻用される漢方薬に、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、加味逍遙散(かみしょうようさん)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)の3処方があります。それぞれの処方の特徴をお話しします。
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
やせて体力がなく、冷え症で貧血傾向があり、全身倦怠感、四肢冷感、頭痛、めまい、肩こり、動悸などを訴える人に用いられます。
更年期障害、月経困難症、不妊症、妊娠中の諸病などに使われます。
加味逍遙散(かみしょうようさん)
体力がなく疲れやすくて、不安、不眠、いらいらなどの精神神経症状を訴える人に用いられます。
肩凝り、頭痛、めまい、ほてり、発作性の発汗などにも有効です。更年期障害、月経困難症、不妊症などに使われます。
桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
体力は普通で、のぼせて赤ら顔のことが多く、頭痛、肩こり、めまい、のぼせ、足の冷えなどを訴える人に用いられます。
更年期障害、月経困難症、不妊症などに使われます。