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【産婦人科医コラム】月経前の不調について(1)2020.10.06

いつもなら我慢できることにいらいらしたり、ひどく気分が落ちこんで生きていることすらつらく感じたり。やたらと眠くて朝も起きられず、鏡を見れば顔もパンパンにむくんで髪もバサバサ、おまけに口の周りにニキビまで!集中力も低下して、勉強や仕事もはかどらない。便秘でお腹も苦しいのに、妙に甘いもの・炭水化物系が食べたくなって過食がとまらない。「もうこの世の終わり!」と絶望的に・・そうこうして数日たつと・・・「なんだ月経か!」嘘のようにこれまでの心身の不調がとれてしまう。このような症状に悩んでいる方は多いのではないでしょうか?

 月経前症候群(Premenstrual syndrome :PMS)は、「月経前3~10日の黄体期のあいだ続く精神的あるいは身体的症状で、月経発来とともに減退ないし消退するもの1)」といいます。特に精神症状においてより重症な場合は、「月経前不快気分障害premenstrual dysphoric disorder:PMDD」といい女性特有のうつ病性障害に分類されます。
 PMSは月経がある女性の50~70%に認められる2)とされますが、多くの女性が経験することや月経が始まると毎回改善するという間欠的な症状であるため、かえって疾患としての認識を低下させて受診をためらってしまう方も少なくありません。

 PMSが起きる原因はいまだ確立してはいませんが、排卵後に起こり月経が開始すると症状が軽快することから女性ホルモンの卵胞ホルモン(エストロゲン)の減少や黄体ホルモン(プロゲステロン)の増加が大きくかかわっていることは確かです。PMSが起こりやすい条件として「30歳代」「経産婦」などがありますが、最も重要な因子として「ストレス」があげられます3)。日常生活に対する満足度や負担感がPMSに関連しており、ストレスを感じている方ほどPMSの確率が高まります。

 エストロゲンは女性の心身の健康を守る役割があります。女性は子を産み育てる閉経前までは動脈硬化などの病気になりにくく、かつ我慢強くいられるのはエストロゲンのお陰だと言っても過言ではありません。エストロゲンと、脳内神経伝達物質の一つであるセロトニンが関連していることも分かってきています。排卵後にエストロゲンは2段階に分けて低下します。ストレスを普段から抱えていても、卵胞期は何とかやりすごせても排卵後のエストロゲンの低下で守りが低下すると、抑うつ的になりやすくなります。

 また排卵後に増加するプロゲステロンは、体温を上昇させ、むくみや便秘など身体的な症状の原因になります。このためいらいらするということもあるでしょう。また月経前の食欲増進もホルモンの影響が示唆されています。毎月月経で20~140mL出血するわけですから、月経前に食欲を増すようしくみが出来ているとも考えられます。

 ただ、人類が出現したころと異なり、糖質にあふれる現代では、本来食べるべき赤身の肉・魚よりも糖質や炭水化物を摂取してしまうことが多く、その結果、さらにむくみや体重増加など精神的にダメージを負うという「負の連鎖」につながりがちです。

 今回は月経前症候群(PMS)がどんなものか、なぜ起きるのかということについてお伝えしました。次回はPMSの治療法・対処法についてご紹介したいと思います。

1) 日本産婦人科学会(編):産婦人科用語集.第2版,p34,金原出版,東京,1997
2) 堀口 文,太田博明,野澤志朗:月経前症候群とその扱い方.産婦人科治療77:47-52,1998
3) 森 和代,川瀬良美,吉崎晶子, 他:成熟期女性のライフスタイルとPMSとの関連についての検討.女性心身誌9:134-145,2004

武者 稚枝子

武者稚枝子

稚枝子おおつきクリニック

女性へのメッセージ

様々な分野での女性の活躍が目覚ましいですが、その一方で、女性の担う役割が大幅に増大し、疲弊している女性が増えています。疲れがとれない、過食してしまう、冷える、やる気がおきない、つい子供にあたってしまう、眠れない・・・などさまざまな症状が表れます。原因は一つだけでなく、月経(生理)との関連、育ってきた状況や現在の生活、そして見落とされがちな栄養の問題など、心と体の問題など多くのことがらが要因となっていることがほとんどです。当クリニックでは、こうした要因を一つ一つひもときながら治療をしていきます。ホルモン剤、漢方製剤、栄養療法(分子整合栄養医学)、カウンセリングなどを組み合わせて治療致します。

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