【産婦人科医コラム】妊活栄養素について~専門医がポイント解説~2022.07.21
早ければ20代前半から不足・欠乏が進行し、妊活に影響を及ぼす栄養素について、妊娠のための身体づくりを重視する専門医がポイント解説します。
生活習慣の改善には時間がかかります。皆さんに一日も早く取り組み始めていただきたいと願って、豊橋市民病院総合生殖医療センターで患者さんに自ら指導している内容をお伝えします。
妊活に限らず、健康でより良い生活習慣でいることは、パートナーの男性はもちろん、妊娠前、妊娠中、産後、更年期、老後に共通した重要なポイントです。食品の栄養素について、管理栄養士さんの本を読んだり、その都度検索したりしながら知識を深めましょう。加工食品はほどほどに賢く利用し、成分表示、産地、添加物をチェックする習慣をつけましょう。
なお、糖尿病や高血圧などの病気がある場合は、主治医の先生に相談が必要です。
栄養素について
亜鉛
- 牡蠣(カキ)は有名ですが、肉類なら鶏肉や豚肉より牛肉を。
- 銅の摂取が過剰だと亜鉛の吸収が妨げられます。代表格はチョコレートやココアに含まれるカカオです。
- 加工食品やインスタント食品はほどほどに。亜鉛の吸収を阻害する食品添加物が問題視されています。
ビタミンD
- 必要量の3分の2は日光から。ガラス越しでなく、直接15分から始めてください。
- 脂溶性ビタミンなので、脂ののった魚がお勧めです。脂質も良質なものを。
タンパク質
- 一度にたくさん摂取するより、朝・昼・晩の3食に分けて摂取した方が効率的です。
- 意外なものにタンパク質が含まれております。ブロッコリーは100gで37kcalなのにタンパク質が5.4g(参考:牛乳100mlには3.3g)、ビタミンC、葉酸、食物繊維だけではないのです。
鉄
- 食品中の鉄の含有量より吸収効率の良いヘム鉄を中心に考え、なるべく肉類から摂取しましょう。
- 温野菜ならタンパク質を一緒に、生野菜ならビタミンCが失活しない状態で一緒に摂取できれば、野菜に含まれる非ヘム鉄でも吸収効率を少しは高められます。
葉酸
- 基本は1日350gの野菜。ほとんどの場合、妊活に必要な1日量は簡単にクリアできます。ビタミンやミネラルや食物繊維もたくさん含まれていて最も健康的な葉酸の取り方といえます。
- どうしても野菜嫌いならサプリメントで。
カルシウム
- 採血値が低下するのは身体が悲鳴を上げてからです。低体重や肥満の場合、もしくは高ストレス生活では、カルシウム不足になっているかも。
- 爪が割れやすくなってませんか?それカルシウム不足かも。
- ビタミンDやビタミンAが欠乏していたらカルシウム不足は解消困難です。
抗酸化物質
- トマトは強力な抗酸化物質リコピンを豊富に含みます。ミニトマトに多く含まれるクエン酸も抗酸化物質。ある調査で医師が摂取する野菜の1位(2位はブロッコリー)というのも納得ですね。
- ビタミンEは抗酸化作用に欠かせない脂溶性ビタミン。アボカドがお勧めです。
脂肪燃焼・ダイエット
- 一に運動、二に食事、三にストレス解消、四にサプリメントです。順序をまちがわないように。
- 食物繊維による整腸効果、腸内細菌叢(そう)(腸内フローラ)を整えるプロバイオティクスや発酵食品、低糖質・低GI食品がキーワード。
- L-カルニチンに期待するなら赤身の牛肉を定期的に。サプリメントでは含有量に注意を。
おわりに:栄養素を上手に摂取するポイント4つ
1.記録しましょう
カロリー計算、タンパク質計算、塩分計算をして記録しましょう。
2.一日30品目を目標にしましょう
外食、加工食品、インスタント食品は目標達成の脇役として週間予定の中に組み入れましょう。仮にこれら脇役に頼りすぎた日があったとしても失敗と考えず前向きな気持ちで3日以内に見直しましょう。
3.料理のレパートリーを増やしましょう
小魚、貝類など、丸ごと食べられる食材は、栄養バランスの優等生。味付けの塩分に注意しながら、料理のレパートリーに組み入れましょう。
4.三食を規則正しく摂りましょう
胃、腸、肝臓、膵臓、腎臓など重要臓器に負荷をかけすぎない食生活、すなわち三食を規則正しく摂り、空腹時間や十分な睡眠時間を確保する事が、妊活には特に大切です。運動もストレス対処も全部が密接に関係しあっているのです。
安藤寿夫
豊橋市民病院・総合生殖医療センター センター長
女性へのメッセージ
日本でもっとも理想に近い産婦人科医療を行っているモデル病院の一つとして豊橋市民病院は専門家の高い評価を受けており、見学者や研修希望医師が多数おります。生殖医療においても、最後の子どもを産む目標の日から逆算して計画を立てるファミリープランニングという新しい方式で愛知県東三河地区にお住いのカップルに限定した最新のハードと熱意あるスタッフによる医療を行っています。