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【産婦人科医コラム】漠然と将来の妊娠を考えている方々へ2023.03.02

日々、不妊に関する診療を行い内視鏡手術と体外受精を専門としている一産婦人科医から、漠然と将来の妊娠を考えておられる方々にお話しをさせて頂きたいと思います。

すぐに妊娠できると思っていませんか?

妊娠したい!と考えた時、排卵日頃にタイミングを取れば何ヶ月かで上手く妊娠出来ると思われますか?実はヒトというのは意外と妊娠しない生物でして、最も妊娠しやすい20代前半でも4周期に1回位しか上手く妊娠しません。30代後半ともなると実は年に1回位しか妊娠しません(※)。

原因が男女共にある場合、片方だけにある場合などのパターンがありますが、概ね男女の原因比率は半分ずつです。女性側の原因は婦人科を受診して初めて分かるものも多く、子宮内膜症(卵巣や卵管が癒着してしまう病気)や子宮内膜ポリープ、子宮筋腫などがよく見つかります。これらが存在していることを知らずにトライしても無駄な時間を費やすことになりますので、一度は超音波などの検査をしておくのが良いでしょう。

妊娠希望になって初めて産婦人科を受診し、何か異常が見つかって手術して(現在では全て内視鏡下での手術が可能です)安静期間を経てようやくトライ・・となりますと、結局半年位の時間がかかってしまう事も多いです。時間がなく焦ってしまう30代後半以降での半年というのは非常に重いものです。

自然に近い形での妊娠が上手くいかない場合は体外受精(取り出した卵子を受精させて子宮に戻す)を行います。通院頻度が増えることとお仕事の兼ね合いが難しくはなりますが、2022年4月より保険適用が拡大となってハードルが下がったこと、成功率は年齢に依存することから機を逃さず早く治療に移行することが肝要です。

将来の妊娠に備えて今、できることは?

このコラムをお読み頂いている皆様には将来の妊娠に備えて以下3つのことをオススメしたいです。

①風疹ワクチンを打っておくこと
②妊娠を考えたときには葉酸・鉄のサプリを摂取すること
③色々見つかるきっかけとなる子宮がん検診やブライダルチェックを受けること

これらは先天性疾患や不妊症の予防において間違いなく効果があります。またご自身のキャリアとの兼ね合いで妊娠・出産の時期が遅くなる可能性がある女性は、ピルのメリットとリスクを理解した上で、卵巣の加齢を抑える意味でもピルの内服を推奨します。

現在は長く服用して数か月に1回の軽い出血で済むピルもあり、色々な面でメリットが大きいと思います。

おわりに:子供を持つことについて

お子さんを作ること自体悩まれている方もおられることでしょう。確かにご夫婦それぞれの時間はしばらく無くなり、お金ばかり飛んでいくボランティアのような生活がイメージされてしまう面もあるかと思いますが、育児という全く己の思い通りにならないものを受け入れることが人間としての度量を高め、ひいてはご夫婦共々その魅力を大いに高めてくれるものになるのではと思います。

 日本では育児の大変さばかりが前面に押し出されてしまうことの方が多いですが、育児の楽しさ、素晴らしさがもっと語られるようになるべきだと考えています。

※参考文献:M. Sara Rosenthal.The Fertility Sourcebook.Third Edition

田島 博人

田島 博人

新百合ケ丘総合病院 産婦人科/リプロダクションセンター 部長

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