きちんと睡眠をとっているのに「日中の眠気」が起こる原因と対処法は?2023.12.14
「きちんと睡眠をとったはずなのに、日中眠くて仕方がない!」という経験をした人もいると思います。前日の夜更しや徹夜など、睡眠習慣が一時的に乱れたことが原因であれば、基本的には数日でおさまっていきます。
しかし、慢性的に日中の眠気が続く場合は、何か別の原因や疾患が潜んでいる可能性があり、きちんと睡眠をとっているつもりでも、しっかり睡眠をとれていない可能性があります。この記事では、日中の眠気の原因とその対処法について、とくにストレスからくるものを中心にご紹介ししていきます。
きちんと睡眠をとっているのに眠いのはどうして?
日中に眠くなる原因にはさまざまなものが考えられますが、そのひとつに「ストレス」があります。ストレスとは「ストレッサー」という外部からの刺激(ストレスを引き起こす原因)によって、心身に「ストレス反応」が出ている状態のことを指します。
ストレッサーには、大きく分けて以下の5種類があります。
- 物理的ストレッサー:太陽光からの紫外線、工事現場の騒音、冷暖房によって体が感じる寒暖差など、環境的な刺激
- 化学的ストレッサー:飲酒によるアルコール摂取、喫煙によるニコチン吸収などで受ける刺激
- 生物学的ストレッサー:ウイルスや病原菌などが体内へ侵入することによる刺激
- 社会的ストレッサー:情報が多すぎる生活、家庭環境、職場や学校での人間関係など
- 精神的ストレッサー:対人関係で生じる不安・イライラ、悲しみ、仕事や学業に対する緊張・焦りなど
ストレス反応とは、これらのストレッサーに対して身体・精神のどちらか、あるいは両方に現れる反応のことを言います。ストレッサーに触れると、ストレスホルモンと呼ばれる「アドレナリン」や「コルチゾール」が分泌され、循環器・消化器・呼吸器などの活動を調整する自律神経「交感神経」が緊張状態となります。
ストレス反応の多くは心身の双方に現れ、とくに精神的ストレッサーの「不安・怒り・悲しみ・焦り」といった変化そのものが作用し、ストレス反応としても同様の症状が現れます。その他にも、心身に現れるストレス反応としては以下のようなことが挙げられます。
体に現れるストレス反応
- 自覚症状:頭痛・腹痛・肩こり・めまい・肌荒れなど
- 診断によってわかる疾患:胃潰瘍・過敏性腸症候群・高血圧症など
精神に現れるストレス反応
- 自覚症状:不安・気力低下・意欲減退、判断力・集中力の低下など
- 診断によってわかる疾患:うつ病・不安障害・睡眠障害など
日中の眠気にどう対処すればいいの?
日中眠ってはいけないときに強い眠気に襲われたら、以下のような方法を試してみましょう。
1分間仮眠する
- 椅子に深く腰かけ、全身の力を抜き、1分間目を閉じて休む
- 目を閉じることで脳に入ってくる情報を遮断し、脳を休ませて疲労回復する
- 「今から疲れをとるんだ」と、休むことに集中するのが重要
1分間の仮眠を繰り返す
- 仕事や学業の効率が下がってきた、疲れた、と感じたタイミングで仮眠をとる
- 意識的に何度も繰り返すと、脳の疲労がとれる
ガムを噛む
- 顎の筋肉の収縮と弛緩が周期的に繰り返されるため、一定のリズム運動となって神経細胞が活発化し、脳・体が目覚める
明るい場所で光を浴びる
- 強い光は睡眠ホルモン「メラトニン」を減少させ、眠気を和らげる
背筋を伸ばす
- 体温が上がり、全身が活動モードとなるので、活発に動けるようになる
- 背中には長時間安定的にエネルギーを発生させる「遅筋」が集まっている
耳を引っ張る
- 耳たぶのツボを軽く揉むと体が温まり、眠気がとれやすくなる
- 両手で左右の耳たぶを持ち、下にゆっくり3秒引っ張ってポンと放すのを4~5回繰り返す
- 仕上げとして、耳全体を揉んだり、上下・左右・斜め方向に引っ張ったりすると、耳全体のツボが刺激されるのでより効果的
カフェインをとる
- コーヒーや緑茶などに含まれる
- 脳に溜まった睡眠惹起物質の働きをブロックし、眠気を払う
これらの方法はあくまで一時的なもので、根本的な解決ではありません。あくまでも、そのときだけ眠気を覚ます方法として使いましょう。
たとえば、カフェインなどは体が慣れてしまうとだんだん効かなくなってしまいます。日中の眠気が何日も、何週間も続く場合は、根本的な解決が必要でしょう。
日中の眠気を予防するためにできる対策は?
前述のような一時的な解決法ではなく、根本的な解決方法として、夜の睡眠の質を高め、翌日に眠気を残さないという方法があります。睡眠の質を上げるためにはさまざまな方法がありますが、一例として以下のような方法が挙げられます。ぜひ、自分に合った方法を探すためにも、色々と試してみてください。
就寝時刻の1時間前に、湯船につかって入浴する
- 38~40℃のぬるま湯に設定し、20分程度湯船につかる
- 休息をつかさどる「副交感神経」が優位になるため、リラックスできる
- 入浴によって深部体温が上がったのち、汗が引いて深部体温が下がったタイミングで眠気が訪れる
髪をドライヤーで乾かしてから寝る
- 髪が濡れたまま寝ると首元が冷えて交感神経が刺激されてしまい、眠りが浅くなってしまう
コップ1杯の水を飲んでから寝る
- 睡眠中に汗をかくと、体温が下がって眠りが深くなる
- しっかり汗をかくためにも、就寝前の水分補給が重要
- ただし、ここで冷えた水を飲むと体が緊張して眠りが浅くなるため、常温の水を飲む
寝室ではテレビやスマートフォンを見ない
- 寝る前にデジタル画面を見ると脳が興奮して寝つけなくなってしまう
- 一度読んだことのある本を読むと、脳に与える刺激が少ないため、スムーズに眠れる
寝る前にハーブなどの香りをかぐ
- いい香りをかいでリラックスすると、脳の副交感神経を活性化し、睡眠の質を上げられる
- ラベンダーやカモミールなどハーブ系のアロマオイル、コーヒーの生豆が入った容器などを枕元に置いておくとよい
気になることはメモにアウトプットしてしまう
- 気になることがあって寝つけない場合は、それをメモに書き出して一旦置いておく
- 書く内容はできるだけシンプルにし、単語だけでもよい
- 解決しようとするのではなく、単に「一旦悩みを体の外に出して置いておく」というイメージ
日中の眠気が病気によることも…。
夜しっかり寝ている、生活習慣も改善した、上記の解決法も試してみた、それでも眠気がとれないという場合は、何らかの疾患の可能性もあります。以下のような「過眠症(ナルコレプシー)」「睡眠時無呼吸症候群」の心当たりがあれば、ぜひ早めに病院を受診しましょう。
過眠症(ナルコレプシー)とは?
過眠症(ナルコレプシー)とは、仕事中や食事中などの眠ってはいけないときでも、断続的に耐え難いほどの強い眠気に襲われてしまう状態です。この睡魔によって集中力・持続力などが損なわれるため、学業や仕事に支障が出てしまうこともあります。ナルコレプシーの主な症状は以下の通りです。
断続的な日中の強い眠気
- 耐え難いほどの強い眠気に襲われ、自分の意志でコントロールできない
- 会議中や食事中など、眠ってはいけないときにも眠り込んでしまうことがある
- 眠る時間は長くても約30分程度と短く、目が覚めると一時的にスッキリするが、しばらくするとまた繰り返し眠気に襲われる
情動脱力発作
- 笑ったり怒ったりというように、感情が急に変化したときに起こる
- 手の力が一瞬抜けたり、顎の力が抜けてろれつが回らなくなったり、全身の力が抜けたりする
- いずれの症状も、たいてい数秒ほどで自然に回復する
金縛り(睡眠麻痺)・入眠時幻覚
- 眠ってすぐや目覚める直前に金縛りにあうことがある
- 寝入りばなに、現実と区別がつかないような夢を見ることがある
ナルコレプシーの原因は、「睡眠」と「覚醒」を保つ仕組みのバランスが崩れることだと考えられています。そのために脳の視床下部にある、目覚めをコントロールする部位から指令がうまく出なくなり、眠りから覚醒へと切り替えができなくなってしまうのです。
睡眠時無呼吸症候群とは?
睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは、睡眠中に無意識に呼吸が止まってしまうことで、本人は気づいていないことが多いです。しかし、体には負担がかかるため睡眠の質が下がってしまいます。睡眠時無呼吸症候群の主な症状は、日中の強い眠気といびきです。
日中の強い眠気
- しっかり睡眠時間を確保していても、夜間に何度も目が覚めて睡眠の質が下がってしまう
- 呼吸をしていない時間は脳や体が酸欠状態になり、全身に疲労物質が溜まってしまう
いびき
- お酒を飲んだときに起こるような一時的ないびきとは違ういびき
- 仰向けに寝ると音が大きくなる、強弱がある、朝までずっと続く、突然息が止まったように途切れる、などの特徴がある
SASには、肥満が大きく影響していると言われています。肥満になると喉の周辺に脂肪がついて気道が狭まり、無呼吸・低呼吸などを引き起こしやすくなります。肥満の人はそうでない人と比べると、SASの発症リスクが3倍になると言われています。
なお、骨格の細い痩せ型や、小柄で顎が小さかったり狭かったりする人も気道がふさがりやすいため、こうした人はちょっとした体重の増加でSASになりやすいと考えられます。
また、鼻がつまりやすい人もSASのリスクがあります。花粉症やその他のアレルギー・鼻炎などで鼻がつまると、自然と口で呼吸をするようになり、そのまま眠ると寝ている間に重力で舌が落ち、上気道が狭まってしまうのです。
おわりに:日中の強い眠気はストレスのほか、過眠症やSASが原因かも
日中の強い眠気の原因として、外部からの刺激「ストレッサー」に体が反応してしまう「ストレス状態」が考えられます。もし、思い当たる原因がある場合は、ストレッサーを取り除いたり、眠気を覚ます工夫をしてみたりしましょう。夜の睡眠の質を高めるのも大切ですので、睡眠トラッキング機能があるデバイス(スマートウォッチなど)で、一度睡眠状態を記録してみるのもおすすめです。また、過眠症や睡眠時無呼吸症候群などが原因となっている可能性もあります。これらの症状に心当たりがあれば、一度病院を受診してみましょう。
(medicommi 2023/1/26)